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【50項目講座 第13回】多文化・多言語主義|同化主義・複言語主義・日本語教育の参照枠をやさしく解説

「多文化主義」と「多言語主義」って、似た言葉がたくさんあって混乱するよ。日本語教育とどう関係するの?
HARU
HARU
まずは結論

多文化主義は、さまざまな文化が対等に共存することを認める考え方で、少数派を多数派に合わせる同化主義と対になる。日本語教育は、学習者が日本語を使って社会に参加するのを支え、共生社会をつくる役割を持つ。

50項目講座の第13回は、「言語と社会」の区分から「多文化・多言語主義」です。

第3回の「多文化共生」では、地域で外国人と日本人が共に暮らすための取り組みを学びました。

今回は、その土台にある「多様な文化やことばをどう受け止めるか」という考え方を整理します。

LULU
LULU
この回は「言語と社会」の区分の最後です。これまでの回で出てきた考え方が、ここで一つにつながっていきます。

動画で学ぶ「多文化・多言語主義」(約3分)

この回の要点を、LULUとHARUの会話で約3分の動画にまとめました。

通勤中や家事の合間に、耳で聞くだけでも復習できます。

最後の確認クイズ2問で、覚えたかどうかを試してみてください。

この項目で求められること

文部科学省のコアカリキュラムでは、この項目の到達目標を「多言語多文化社会について理解し、学習者が日本語を使うことにより社会につながることを意識し、共生社会の実現に向けて日本語教育が果たす役割を教育的観点からも理解している」としています。

用語を覚えるだけでなく、日本語教育が社会の中でどんな役割を持つかを考えることが求められています。

ポイント① 多文化主義と同化主義

一つの社会に、さまざまな文化や背景を持つ人がいるとき、その違いをどう扱うかには大きく2つの考え方があります。

考え方 内容
同化主義 少数派に、多数派の言語や文化に合わせることを求める
多文化主義 それぞれの文化を尊重し、対等に共存することを認める

カナダとオーストラリアの多文化主義

カナダは1971年、多文化主義を国の政策として掲げました。

オーストラリアも、1970年代に、白人以外の移民を制限する「白豪主義」をやめ、多文化主義へと方針を転換しています。

「るつぼ」と「サラダボウル」

多様な人々が集まる社会は、よく次のようにたとえられます。

  • るつぼ:金属を溶かして混ぜる器のように、さまざまな文化が溶け合って一つになる(同化に近いイメージ)
  • サラダボウル:サラダの野菜のように、それぞれの特色を保ったまま共存する(多文化主義に近いイメージ)
「るつぼ」と「サラダボウル」、たとえで覚えるとわかりやすいね。溶け合うか、そのまま共存するかのちがいなんだ。
HARU
HARU

ポイント② 多言語主義と複言語主義のちがい

ことばについても、似た2つの用語があります。

用語 何についての考え方か
多言語主義 社会の中で、複数の言語が共存している状態や、それを認める考え方
複言語主義 一人ひとりの中に複数の言語の力があり、それらが関わり合っているという考え方(欧州評議会が提唱)

ちがいは、社会のレベルで考えるか、個人のレベルで考えるかです。

複言語主義では、どの言語も完璧に話せる必要はなく、場面に合わせて部分的な力を組み合わせて使うことも大切な力と考えます。

複言語主義とCEFRについては、第5回「言語政策」でも紹介しています。

LULU
LULU
「多」は社会にたくさんの言語がある、「複」は一人の中に複数の言語がある、と漢字のイメージで区別すると覚えやすいです。

ポイント③ 共生社会と日本語教育の役割

日本語教育推進法の目的

2019年に施行された日本語教育の推進に関する法律(日本語教育推進法)は、その目的に「多様な文化を尊重した活力ある共生社会の実現」に資することを掲げています。

日本語教育は、外国人が日本語を学ぶためだけのものではなく、共生社会をつくるための取り組みの一つと位置づけられています。

「日本語教育の参照枠」の3つの理念

2021年に文化審議会がまとめた「日本語教育の参照枠」は、日本語教育の理念として、次の3つを示しています。

理念 内容
① 日本語学習者を社会的存在として捉える 学習者は、新たに学んだ言語を用いて社会に参加し、より良い人生を歩もうとする存在
② 言語を使って「できること」に注目する 言語知識を持っていることよりも、その知識を使って何ができるかに注目する
③ 多様な日本語使用を尊重する 学習者の目的に応じた目標を大切にし、必ずしも母語話者と同じ日本語の力を求めない

この理念は、到達目標の「学習者が日本語を使うことにより社会につながる」という考え方と重なっています。

LULU
LULU
③の「母語話者と同じ力を求めない」は、教える側が意識していないと見落としやすい点です。目標は、学習者一人ひとりの暮らしや目的に合わせて考えたいですね。

学習者はここでつまずく

「日本人のように話せないとだめ」と思い込む
学習者の中には、発音や話し方が母語話者と少しでもちがうと「自分の日本語はだめだ」と感じ、話すことをためらってしまう人がいます。
また、日本語を学ぶには、自分の母語や文化を手放さなければならないと考えてしまうこともあります。
教えるときのポイント:「何ができるようになったか」を一緒に確認し、できたことを認めましょう。母語や母文化は大切な力であり、日本語と一緒に持っていてよいことも伝えたいところです。

母語や継承語を大切にする考え方は、第9回「言語政策と『ことば』」でも扱っています。

確認クイズ(5問)

答えを考えてから、「答えを見る」を押してください。

Q1. カナダが1971年に国の政策として掲げた、さまざまな文化の対等な共存を認める考え方はどれ?

① 同化主義 ② 多文化主義 ③ 自文化中心主義 ④ 白豪主義

答えを見る

正解:② 多文化主義
オーストラリアも1970年代に多文化主義へ方針を転換しました。

Q2. 少数派に、多数派の言語や文化に合わせることを求める考え方を何という?

① 多文化主義 ② 複言語主義 ③ 同化主義 ④ 文化相対主義

答えを見る

正解:③ 同化主義
多文化主義と対になる考え方です。

Q3. 多様な人々が、それぞれの特色を保ったまま共存する社会のたとえはどれ?

① るつぼ ② サラダボウル ③ ダイグロシア ④ 言語景観

答えを見る

正解:② サラダボウル
「るつぼ」は、文化が溶け合って一つになるイメージです。

Q4. 一人ひとりの中に複数の言語の力があり、それらが関わり合っているという、欧州評議会の考え方はどれ?

① 多言語主義 ② 複言語主義 ③ 同化主義 ④ 相対敬語

答えを見る

正解:② 複言語主義
社会の中に複数の言語が共存することを指すのは多言語主義です。

Q5. 「日本語教育の参照枠」の理念で、学習者は何として捉えられている?

① 社会的存在 ② 母語話者 ③ 試験の受験者 ④ 生活の支援を受ける人

答えを見る

正解:① 社会的存在
新たに学んだ言語を用いて社会に参加し、より良い人生を歩もうとする存在とされています。

まとめ

50項目講座を案内するLULU
第13回「多文化・多言語主義」のポイント
  • 多文化主義は文化の対等な共存、同化主義は多数派に合わせること
  • カナダは1971年に多文化主義を国の政策に
  • 「るつぼ」は溶け合う、「サラダボウル」は特色を保って共存
  • 多言語主義は社会のレベル、複言語主義は一人ひとりのレベル
  • 参照枠の理念:学習者を社会的存在として捉え、「できること」に注目し、多様な日本語使用を尊重する

第13回では、多様な文化やことばを受け止める考え方と、共生社会の中での日本語教育の役割を学びました。

これで、2つ目の区分「言語と社会」はひと通り終わりです。

次回の第14回は、3つ目の区分「言語と心理」から「談話理解」です。

講座の全体は、50項目講座の目次から確認できます。

LULU
LULU
日本語を教えることは、学習者が社会とつながるお手伝いでもあります。その意味を胸に、次の区分へ進んでいきましょう。

※到達目標は、文部科学省「登録日本語教員 実践研修・養成課程コアカリキュラム」の必須の教育内容から引用しています。「日本語教育の参照枠」の理念は文部科学省の公表資料、日本語教育推進法の目的は同法第1条にもとづいています。

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