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【50項目講座 第3回】多文化共生(地域社会における共生)|国籍条項・浜松宣言・推進プラン・やさしい日本語をやさしく解説

多文化共生って、「外国の人と仲良くしましょう」ということ?国や自治体は、具体的に何をしているの?
HARU
HARU
まずは結論

この項目は、地域で暮らす外国人の今(国際結婚・外国にルーツを持つ子ども)と、外国人住民が地域に参加するための動き(国籍条項・外国人集住都市会議)、そして国と自治体の取り組み(多文化共生推進プラン・やさしい日本語・地域日本語教育)を、一本の流れで理解する回。

50項目講座の第3回は、「社会・文化・地域」の区分から「多文化共生(地域社会における共生)」です。

前回は、国がどんな制度で外国人を受け入れてきたかを学びました。

今回は視点を地域に移し、外国人が「住民」として暮らしていくための取り組みを見ていきます。

日本語教師が働く場所には、日本語学校だけでなく、自治体やボランティアが開く地域の日本語教室もあります。

LULU
LULU
地域の日本語教室には、子育て中のお母さんや工場で働く人、定年後に日本に来た家族など、いろいろな人が来ます。教室は、日本語を学ぶだけでなく、地域とつながる入り口にもなるんです。

動画で学ぶ「多文化共生(地域社会における共生)」(約7分半)

この回の要点を、LULUとHARUの会話で約7分半の動画にまとめました。

通勤中や家事の合間に、耳で聞くだけでも復習できます。

最後の確認クイズ2問で、覚えたかどうかを試してみてください。

この項目で求められること

文部科学省のコアカリキュラムでは、この項目の到達目標を「日本の多文化共生施策や地域社会における学習者と周囲との接触の状況を理解している」としています。

つまり、国や自治体がどんな施策を進めてきたかと、地域で学習者がどんな人と、どんな場面で関わっているかの2つを押さえる項目です。

この回の5つのテーマは、次のような流れでつながっています。

  • ニューカマーが定住し、国際結婚の家族や外国にルーツを持つ子どもが地域で増えた
  • 外国人住民が地域の決定に参加するしくみが、自治体から少しずつ広がった
  • 国(総務省)は多文化共生推進プランで、自治体の取り組みを後押ししてきた
  • 情報を届けるためにやさしい日本語が広がり、地域日本語教育は自治体の責任と定められた

ポイント① 地域社会で暮らす外国人

定住する外国人と国際結婚

1980年代以降、インドシナ難民や中国帰国者、南米の日系人など、いわゆるニューカマーが次々に来日し、日本での定住を始めました。

同じころから2000年代初めにかけて、地方の農村では、結婚しない男性の増加や過疎化を背景に、国際結婚で来日する女性も増えました。

中国や東南アジア出身の女性が多く、「日本人の配偶者等」などの在留資格で、地域に根ざした暮らしを送っています。

国際結婚の件数は1980年代後半から急に増え、2006年に約4万4,700件でピークをむかえ、その後は減っています。

外国にルーツを持つ子ども

両親の両方、またはどちらかが外国出身である子どもを、外国にルーツを持つ子どもといいます。

その多くは、学校教育法第1条に定められた小学校・中学校・高校など、いわゆる一条校に通っています。

文部科学省の調査(2025年度)では、公立学校で日本語指導が必要な児童生徒は8万4,759人で、過去最多を更新しました。

このうち約1万1,000人は日本国籍の子どもで、「外国籍=日本語指導が必要」とは限らないことがわかります。

家で使う言語は、外国籍の子どもでは中国語、ポルトガル語、フィリピノ語の順に多くなっています。

さまざまな経緯で暮らす外国人

留学生や高度人材として来日し、卒業や就職のあとも日本に住み続ける人も増えています。

技能実習、特定技能、EPAの看護師・介護福祉士候補者など、地域にはさまざまな経緯で来た外国人が暮らしています。

日本語の指導が必要な子どもが8万人以上もいるの?しかも日本国籍の子もいるんだね。
HARU
HARU

試験ではこう問われる

  • 一条校の意味(学校教育法第1条にもとづく小・中・高校など)
  • 日本語指導が必要な児童生徒が増え続けていること、日本国籍の子どももいること
  • 国際結婚が2006年にピークをむかえたこと

ポイント② 外国人住民が地域に参加する

国籍条項という壁

これからの共生社会では、外国人住民が自分の意見を地域に伝え、決定に参加できることが求められています。

その参加を長いあいだ妨げてきた壁の一つが国籍条項です。

国籍条項とは、地方公務員への就職や公営住宅への入居などの条件に「日本国籍があること」を求める決まりのことです。

年 できごと
1979年 日本が国際人権規約(社会権規約・自由権規約)を批准。国籍による差別をなくす議論が進む
1996年 自治省(今の総務省)が、条件付きで国籍条項をなくすことを認める方針を示す
1996年 神奈川県川崎市が、条例にもとづいて外国人市民代表者会議をつくる
2001年 日系南米人が多く住む13の自治体が外国人集住都市会議をつくり、浜松市で第1回会議

国際人権規約は、世界人権宣言(1948年)の内容をもとに、守る義務のある条約にしたものです。

川崎市の外国人市民代表者会議は、外国人住民自身が市の政策づくりに直接関われるしくみとして注目されました。

外国人集住都市会議と浜松宣言

外国人集住都市会議は、外国人住民の多い自治体どうしが、情報を共有し、政策で協力するための集まりです。

2001年の第1回会議では、浜松宣言及び提言がまとめられました。

地域で共生社会をつくることを宣言し、国や県などに向けて、次の3つの課題について提言しています。

  • 教育(子どもの日本語や学校での受け入れ)
  • 社会保障(医療や年金などの制度)
  • 外国人登録などの手続き

外国人住民が地域で暮らすうえでぶつかる課題を「見える形」にし、解決に向けて動き出すきっかけになりました。

LULU
LULU
浜松宣言の3つの柱は「教育・社会保障・手続き」です。会議ができたのは、日系ブラジル人などが多く住む工業の町だったことと結びつけると覚えやすいです。

試験ではこう問われる

  • 国籍条項の説明(公務員の就職や公営住宅の入居で日本国籍を求める決まり)
  • 外国人市民代表者会議をつくった自治体(川崎市・1996年)
  • 外国人集住都市会議(2001年)と浜松宣言及び提言の3つの課題

ポイント③ 多文化共生推進プラン

多文化共生の定義

「多文化共生」という言葉は1990年代ごろから使われ始めました。

総務省が2006年に出した『多文化共生の推進に関する研究会報告書』では、多文化共生を次のように定めています。

総務省による多文化共生の定義

国籍や民族などの異なる人々が、互いの文化的ちがいを認め合い、対等な関係を築こうとしながら、地域社会の構成員として共に生きていくこと

ポイントは、外国人を「お客さん」ではなく、同じ地域に住む住民として考えていることです。

推進プランと事例集

年 できごと
2006年 総務省が地域における多文化共生推進プランを策定。全国の自治体に広がる
2016年 事例集の作成ワーキンググループができ、翌年に多文化共生事例集がまとめられる
2020年 推進プランを改訂(外国人住民の増加・特定技能・デジタル化・気象災害の激甚化をふまえて)
2021年 『多文化共生事例集(令和3年度版)』。コロナへの対応を含む全国の好事例を紹介

推進プランは、自治体が多文化共生の計画をつくるときの参考として、総務省がまとめたものです。

それまで自治体の国際化の柱は「国際交流」と「国際協力」でしたが、そこに3本目の柱として「地域における多文化共生」が加わりました。

事例集には、やさしい日本語での情報発信、多言語で対応する119番通報(通訳を入れた三者通話)、外国籍の子どもと保護者の居場所づくりなどが紹介されています。

自治体を支えるしくみ

総務省は、多文化共生にくわしい自治体職員などを多文化共生アドバイザーとして登録し、ほかの自治体の取り組みを手伝うしくみをつくっています。

また、災害のときに、行政の災害情報や生活支援の情報を整理し、避難所にいる外国人のニーズと結びつける災害時外国人支援情報コーディネーターを育てる研修も行っています。

試験ではこう問われる

  • 多文化共生の定義のキーワード(文化的ちがいを認め合う・対等な関係・地域社会の構成員)
  • 推進プランの策定(2006年)と改訂(2020年)、策定した省(総務省)
  • 自治体の国際化の3本の柱(国際交流・国際協力・多文化共生)

ポイント④ 在留支援のためのやさしい日本語

災害から生まれたやさしい日本語

1995年の阪神・淡路大震災や2004年の中越地震では、日本語がよくわからない外国人住民が、必要な情報を受け取れずに取り残されました。

この反省から、防災マニュアルや行政の文書にやさしい日本語や多言語での対応が取り入れられるようになりました。

2011年の東日本大震災のあとは、災害のときだけでなく、ふだんの行政サービスや地域の情報でも、やさしい日本語が大切にされるようになっています。

やさしい日本語の書き換え

やさしい日本語とは、日本語を母語としない人にもわかりやすいように、ことばや表現、文の形を簡単にした日本語です。

コツ ふつうの日本語 やさしい日本語
簡単なことばを使う 受診してください 病院に行ってください
敬語をひかえる こちらでお待ちになってください ここで待ってください
一文を短くする 申請書に記入の上、窓口までご提出ください この紙に書いてください。窓口に出してください
カタカナ語をあまり使わない キャンセルの場合はご連絡を やめるときは電話してください
あいまいな言い方をしない 参加できなくもないです 参加できます

国のガイドラインと言語サービス

年 できごと
2020年 出入国在留管理庁と文化庁が在留支援のためのやさしい日本語ガイドラインをつくる。別冊「書き換え例」も公開
2022年 「話し言葉のポイント」を公開
2023年 「やさしい日本語の研修のための手引」をつくり、全国の研修を共有

やさしい日本語は、言語サービスの一つでもあります。

言語サービスとは、だれもが同じように情報を受け取れるように、翻訳・通訳・やさしい日本語などでことばの壁を取り除く支援のことです。

また、短い文で、情報を整理して伝える方法は、外国人だけでなく、子どもや高齢者など、だれにとってもわかりやすいものです。

LULU
LULU
役所の書類によく出てくる「ご記入の上」は、日本語を学ぶ人にとってはとても難しい表現です。「書いてください」と言いかえるだけで、ぐっと伝わりやすくなります。

試験ではこう問われる

  • やさしい日本語が広がるきっかけ(阪神・淡路大震災)
  • ふつうの日本語をやさしい日本語に書き換える問題(敬語・漢語・カタカナ語・長い文)
  • ガイドラインをつくった機関(出入国在留管理庁と文化庁・2020年)と、言語サービスの意味

ポイント⑤ 地域日本語教育の役割

地域の日本語教室

地域の日本語教室は、多くの場合、自治体やNPO、ボランティア団体が開き、外国人が無料または安い費用で日本語を学べる場所です。

病院での受診、子どもの学校との連絡、役所の手続き、ごみ出しのルールなど、暮らしのあらゆる場面に日本語が関わっています。

地域の日本語教室は、外国人が自立し、地域に定着するのを支える大切な役割を持っています。

日本語教育推進法と国の事業

年 できごと
2019年 日本語教育の推進に関する法律(日本語教育推進法)の公布・施行。地域の日本語教育を自治体の責務と定める
2019年度〜 地域日本語教育の総合的な体制づくり推進事業で、国が自治体を支援
2020年 推進法にもとづく基本的な方針を閣議決定
2022年 「地域における日本語教育の在り方について(報告)」で、これからの方向を示す

特に都道府県と政令指定都市には、地域全体の日本語教育の体制を考え、市区町村や団体と協力してつくっていく役割が期待されています。

なお、日本語教育の事業は、2024年4月に文化庁から文部科学省に移っています。

基本的な方針では、地域の外国人が自立した言語使用者として、日本語でやりとりしながら生活できるように支えることが大切だとしています。

空白地域とこれからの地域日本語教育

一方で、日本語教室がない市区町村を空白地域といいます。

2023年11月の調査では、全国1,896の市区町村(政令市の区を含む)のうち737、約4割が空白地域でした。

文部科学省は、空白地域の自治体が日本語教室を立ち上げ、続けていけるように支援する事業(「生活者としての外国人」のための日本語教室空白地域解消推進事業)を行っています。

2022年の報告では、次のようなことが期待されています。

  • 日本語教育の参照枠にもとづき、B1レベル(身近な話題なら要点がわかる)を目標にした教育プログラムをつくる
  • 教室の運営や関係機関との調整をする地域日本語教育コーディネーターや、専門性のある日本語教師を配置する
  • 夜間や週末の教室、オンライン学習など、学ぶ機会を広げる

日本語教育の参照枠については、第21回の日本語教育プログラムの理解と実践でもくわしく扱っています。

教室がない町が4割もあるのか。登録日本語教員が、地域で活躍できる場所はまだまだあるんだね。
HARU
HARU

試験ではこう問われる

  • 日本語教育推進法(2019年)で地域の日本語教育が自治体の責務になったこと
  • 空白地域の意味と、その割合(約4割)
  • 2022年の報告で目標とされた参照枠のB1レベルと、地域日本語教育コーディネーターの役割

学習者はここでつまずく

教室の日本語と、地域の日本語がちがう
教科書で学ぶ日本語は、ていねいでわかりやすい表現が中心です。
一方、地域の暮らしでは、方言や早口の会話、回覧板やごみ出しのお知らせ、学校からのプリントのような独特の文書に出会います。
「燃えるごみは月・木」「上履き持参」のような短い書き方は、教科書ではほとんど出てきません。
教室ではできたのに、近所の人との会話や役所の書類になると、急にわからなくなる学習者は少なくありません。
教えるときのポイント:学習者が住んでいる地域の実際のお知らせや会話の場面を教材に取り入れると、暮らしにつながる力が身につきます。教師自身も、やさしい日本語で話す意識を持ちましょう。

確認クイズ(5問)

答えを考えてから、「答えを見る」を押してください。

Q1. 地方公務員への就職や公営住宅への入居などで、日本国籍があることを条件にする決まりを何という?

① 国籍条項 ② 国際人権規約 ③ 一条校 ④ 言語サービス

答えを見る

正解:① 国籍条項
1996年に自治省(今の総務省)が、条件付きで国籍条項をなくす方針を示しました。

Q2. 2001年の第1回外国人集住都市会議で「浜松宣言及び提言」がまとめられた市はどこ?

① 川崎市 ② 浜松市 ③ 大和市 ④ 姫路市

答えを見る

正解:② 浜松市
教育・社会保障・外国人登録などの手続きの3点について、国や県などに提言しました。川崎市は1996年に外国人市民代表者会議をつくった市です。

Q3. 総務省が「地域における多文化共生推進プラン」を初めて策定したのは何年?

① 1996年 ② 2001年 ③ 2006年 ④ 2020年

答えを見る

正解:③ 2006年
2020年には、特定技能の創設やデジタル化、気象災害の激甚化などをふまえて改訂されました。

Q4. 「この用紙にご記入の上、ご持参ください」を、やさしい日本語に書き換えたものとして、もっとも適当なものはどれ?

① この用紙に記入して、持参してください。
② この紙に書いてください。そして、持ってきてください。
③ 用紙にご記入いただき、お持ちください。
④ この用紙に記入の上、お持ちください。

答えを見る

正解:② この紙に書いてください。そして、持ってきてください。
漢語(用紙・記入・持参)や敬語をやめ、一文を短く分けています。

Q5. 日本語教室がない市区町村(空白地域)について、正しいものはどれ?

① 全国の約1割にあたる
② 全国の約4割にあたる
③ 2019年に、すべて解消された
④ 外国人が住んでいない地域だけを指す

答えを見る

正解:② 全国の約4割にあたる
2023年11月の調査では、1,896の市区町村(政令市の区を含む)のうち737が空白地域でした。

まとめ

50項目講座を案内するLULU
第3回「多文化共生(地域社会における共生)」のポイント
  • 地域には国際結婚の家族や外国にルーツを持つ子どもが増え、日本語指導が必要な児童生徒は約8万5,000人で過去最多
  • 参加の壁だった国籍条項、川崎市の外国人市民代表者会議(1996)、外国人集住都市会議と浜松宣言(2001)
  • 総務省の多文化共生推進プラン(2006策定・2020改訂)。定義は「地域社会の構成員として共に生きていくこと」
  • やさしい日本語は阪神・淡路大震災がきっかけ。2020年に在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン
  • 日本語教育推進法(2019)で地域の日本語教育は自治体の責務に。空白地域は約4割、目標は参照枠のB1

第3回では、地域で暮らす外国人の今と、外国人住民が地域に参加するための動き、国と自治体の取り組みを学びました。

次回の第4回「日本語教育史」では、日本語教育がどのような歴史をたどってきたのかを見ていきます。

講座の全体は、50項目講座の目次から確認できます。

前回の第2回「日本の在留外国人施策」で見た「受け入れ」から「共生」への流れとあわせて復習すると、つながりがよくわかります。

LULU
LULU
自分の住んでいる町に、外国人が何人いて、日本語教室があるかを調べてみると、この回の内容がぐっと身近になります。ぜひやってみてください。

※数字は、文部科学省「日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査」(2025年度)、文部科学省「日本語教育実態調査」(2023年度)、厚生労働省「人口動態統計」、総務省・出入国在留管理庁・文化庁の公表資料にもとづき、2026年10月時点でまとめています。到達目標は、文部科学省「登録日本語教員 実践研修・養成課程コアカリキュラム」の必須の教育内容から引用しています。項目の論点は、その解説書の章立ても参考に整理しています。

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