この項目では、オックスフォードの6つの学習ストラテジー(直接ストラテジーと間接ストラテジー)と、学習スタイルの個人差、そして学習者が自分で学びを進める自律学習を押さえるのが基本。
50項目講座の第17回は、「言語と心理」の区分から「学習ストラテジー」です。
同じ教室で同じ授業を受けても、伸びる学習者と伸び悩む学習者がいます。
その差の一つが、学習者がどんな工夫をして学んでいるか、つまり学習ストラテジーです。
動画で学ぶ「学習ストラテジー」(約2分)
この回の要点を、LULUとHARUの会話で約2分の動画にまとめました。
通勤中や家事の合間に、耳で聞くだけでも復習できます。
最後の確認クイズ2問で、覚えたかどうかを試してみてください。
この項目で求められること
文部科学省のコアカリキュラムでは、この項目の到達目標を「学習ストラテジー等、個々の学習者に合わせた日本語教育を考え、言語学習の効果を高める方法に関して理解し、学習者の自律的な学習を促進することができる」としています。
ポイントは、学習者一人ひとりのちがいに目を向けることと、学習者が自分で学べるように手助けすることの2つです。
ポイント① 学習ストラテジーの6分類
学習ストラテジーとは、学習者が学習を効果的に進めるために使う工夫や行動のことです。
試験でよく問われるのは、オックスフォードによる分類です。
言語を直接あつかう直接ストラテジーと、学習を外側から支える間接ストラテジーに分け、それぞれを3つに分けています。
| 大きな分類 | ストラテジー | 例 |
|---|---|---|
| 直接ストラテジー | 記憶ストラテジー | 語呂合わせや絵と結びつけて覚える、グループに分けて覚える |
| 認知ストラテジー | くり返し練習する、要点をメモする、規則を見つけて分析する | |
| 補償ストラテジー | 知らない語を文脈から推測する、身ぶりや言いかえで補う | |
| 間接ストラテジー | メタ認知ストラテジー | 学習の計画を立てる、進み具合を確かめる、ふり返って評価する |
| 情意ストラテジー | 不安を和らげる、自分をはげます、気持ちを記録する | |
| 社会的ストラテジー | わからないことを質問する、仲間と協力する、相手の文化を理解しようとする |
コミュニケーション・ストラテジーとのちがい
第10回で学んだコミュニケーション・ストラテジーは、話している最中に困ったとき、伝えるための工夫です。
学習ストラテジーは、ことばを身につけるための工夫全体を指す、より広い考え方です。
言いかえや身ぶりのように、両方に入る工夫もあります。
ポイント② 学習スタイルの個人差
学習者には、それぞれ得意な学び方があります。
これを学習スタイル(認知スタイル)といいます。
| 学習スタイル | 特徴 |
|---|---|
| 場依存型 | 全体の流れや場面の中でとらえるのが得意。人とのやりとりの中で学ぶのを好む |
| 場独立型 | 全体から細かい部分を取り出して分析するのが得意。文法の規則を整理するのを好む |
| 視覚型・聴覚型・体感型 | 目で見る、耳で聞く、体を動かす、など情報を受け取りやすい感覚がちがう |
どのスタイルがよい・悪いということはありません。
大切なのは、教師が自分の得意な教え方だけに偏らず、いろいろな活動を組み合わせることです。
「よい言語学習者」の研究
学習ストラテジーの研究は、上手に外国語を身につける人は何をしているのか、という「よい言語学習者」の研究から始まりました。
よい学習者は、推測をおそれない、間違いを気にしすぎず使ってみる、自分の学習をふり返る、などの共通点があるとされています。
ポイント③ 自律学習を支える
学習者が自分で目標を決め、学び方を選び、結果をふり返って次に生かす力を、学習者オートノミー(学習者の自律性)といいます。
教室で過ごす時間は限られているので、教室の外でも学び続けられる力を育てることが大切です。
- 計画:今週の目標と、使う教材・方法を学習者が自分で決める
- 実行・モニター:学んでいる途中で、うまく進んでいるかを確かめる
- ふり返り:できたこと・できなかったことを記録し、次の計画に生かす
この流れは、間接ストラテジーの一つ、メタ認知ストラテジーそのものです。
教師は、ポートフォリオや学習日記、Can-doリストによる自己評価などを使って、学習者がふり返る機会を作ります。
ストラテジーの使い方をはっきり教えて練習させることを、ストラテジー・トレーニングといいます。
学習者はここでつまずく
その結果、1ページ読むのに時間がかかり、文章全体の意味がつかめなくなることがあります。
わからない語があっても前後から推測して読み進める、という補償ストラテジーを使えていないためです。
確認クイズ(5問)
答えを考えてから、「答えを見る」を押してください。
Q1. オックスフォードの学習ストラテジーの分類で、間接ストラテジーに入るものはどれ?
① 記憶ストラテジー ② 認知ストラテジー ③ 補償ストラテジー ④ メタ認知ストラテジー
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正解:④ メタ認知ストラテジー
間接ストラテジーは、メタ認知・情意・社会的の3つです。①〜③は直接ストラテジーです。
Q2. 学習の計画を立て、進み具合を確かめ、ふり返って評価する工夫は、どのストラテジー?
① 社会的ストラテジー ② メタ認知ストラテジー ③ 記憶ストラテジー ④ 補償ストラテジー
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正解:② メタ認知ストラテジー
自分の学習を一段上から見て管理する工夫です。自律学習の土台になります。
Q3. 文章の中の知らない語の意味を、前後の文から推測する工夫は、どのストラテジー?
① 情意ストラテジー ② 社会的ストラテジー ③ 補償ストラテジー ④ メタ認知ストラテジー
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正解:③ 補償ストラテジー
足りない知識をおぎなう工夫です。身ぶりや言いかえで伝えるのも補償ストラテジーに入ります。
Q4. 全体から細かい部分を取り出して分析するのが得意な学習スタイルはどれ?
① 場依存型 ② 場独立型 ③ 聴覚型 ④ 体感型
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正解:② 場独立型
全体の流れや場面の中でとらえるのが得意なのは場依存型です。
Q5. 学習者が自分で目標を決め、学び方を選び、結果をふり返って次に生かす力を何という?
① 化石化 ② 足場かけ ③ 学習者オートノミー ④ 臨界期
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正解:③ 学習者オートノミー
学習者の自律性ともいいます。教師はふり返りの機会を作って、この力を育てます。
まとめ

- 直接ストラテジー:記憶・認知・補償の3つ(オックスフォードの分類)
- 間接ストラテジー:メタ認知・情意・社会的の3つ
- 知らない語を推測する、言いかえで補うのは補償ストラテジー
- 学習スタイルには場依存型・場独立型などの個人差がある
- 自分で計画・実行・ふり返りを回す力が学習者オートノミー
第17回では、学習者の学び方の工夫と、自分で学び続ける力の育て方を学びました。
次回の第18回「異文化受容・適応」です。
講座の全体は、50項目講座の目次から確認できます。
前回の第16回「習得過程」とあわせて、学習者の中で何が起きているかを整理しておきましょう。
※到達目標は、文部科学省「登録日本語教員 実践研修・養成課程コアカリキュラム」の必須の教育内容から引用しています。学習ストラテジーの分類は、オックスフォード(Oxford, 1990)の分類にもとづいてまとめています。