この項目は、海外では約400万人、国内では約29万人が日本語を学んでいることと、国や地域ごとに学ぶ理由や学ぶ場がちがうこと、そして日本語教育を支える国や関係機関(文部科学省・国際交流基金・JASSOなど)の役割を、おおよその傾向でつかむ回。
50項目講座の第7回は、「社会・文化・地域」の区分から「世界と日本の日本語教育事情」です。
この項目では、国際交流基金や文部科学省の調査をもとに、世界と日本の日本語教育の今を見ていきます。
細かい数字を丸暗記する必要はありません。
「どの地域で学ぶ人が多いのか」「なぜ学んでいるのか」という、おおよその傾向をつかむことが大切です。
動画で学ぶ「世界と日本の日本語教育事情」(約6分)
この回の要点を、LULUとHARUの会話で約6分の動画にまとめました。
通勤中や家事の合間に、耳で聞くだけでも復習できます。
最後の確認クイズ2問で、覚えたかどうかを試してみてください。
この項目で求められること
文部科学省のコアカリキュラムでは、この項目の到達目標を「世界と日本の日本語教育の状況について理解している」としています。
試験では、調査の名前と実施する機関、学習者が多い国・地域の順番、関係機関とその事業の組み合わせがよく問われます。
- 海外の状況 → 国際交流基金の海外日本語教育機関調査(3年ごと)
- 国内の状況 → 文部科学省の日本語教育実態調査(毎年)
この2つの調査の名前と、どこが行っているかを、まずセットで覚えておきましょう。
ポイント① 世界の日本語教育の全体像
海外で日本語を学ぶ人の数
国際交流基金が3年ごとに行っている海外日本語教育機関調査によると、海外で日本語を学ぶ人は、1990年代前半に100万人、90年代後半に200万人、2000年代後半に300万人を超えました。
2024年度の調査では、次のような結果になっています。
| 項目 | 2024年度調査 |
|---|---|
| 日本語教育が行われている国・地域 | 143 |
| 日本語学習者 | 約400万人(過去最多) |
| 日本語教育機関 | 約1万9,000機関(過去最多) |
| 日本語教師 | 約8万人(過去最多) |
地域別では、機関数・教師数・学習者数ともに東アジアがもっとも多く、次いで東南アジアで、この2つの地域で全体の約7割を占めています。
学習者が多い国・地域
| 順位 | 国・地域 | 学習者数(2024年度) |
|---|---|---|
| 1 | 中国 | 約102万人(唯一の100万人超え) |
| 2 | インドネシア | 約73万人 |
| 3 | 韓国 | 約56万人 |
| 4 | オーストラリア | 約42万人 |
| 5 | タイ | 約19万人 |
| 6 | ベトナム | 約16万人 |
7位以下は、アメリカ、台湾、ミャンマー、インドと続きます。
ミャンマーは前回の調査から学習者が約5倍に増え、インドなど南アジアの国々でも学習者が大きく増えています。
日本語を学ぶ理由
日本語を学ぶ目的・理由でもっとも多いのは、「アニメ・マンガ・J-POP・ファッションなどへの興味」です。
前回の調査とくらべると、「日本への留学」や「日本での将来の就職」という答えが増えています。
試験ではこう問われる
- 海外日本語教育機関調査を行う機関(国際交流基金)と頻度(3年ごと)
- 学習者が多い国・地域の順番(中国・インドネシア・韓国・オーストラリア…)と、多い地域(東アジア・東南アジア)
- 学ぶ理由のいちばん(アニメ・マンガなどへの興味)
ポイント② 東アジアの日本語教育
中国
1972年の日中国交正常化で第一次日本語ブームが起き、多くの大学で日本語教育が始まりました。
1985年に北京日本学研究センターができ、80年代半ばには第二次日本語ブームとなります。
学生は研究よりも、仕事に役立つことを重視する実利志向が強いのが特徴です。
最近は日本語だけでは就職が難しくなり、2つの学位がとれるダブルメジャー制や、日本の大学と提携して日中両方の学位がとれる2+2制度を取り入れる大学も増えています。
また、大学入学試験の外国語科目で日本語を選ぶ高校生が増え、中等教育で学習者が大きく増えました。
韓国
韓国の日本語教育は、1965年の日韓国交正常化がきっかけになったと考えられています。
1973年に高校で日本語が第二外国語の一つになり、2001年には中学校でも始まりました。
学習者の約7割は中学生と高校生で、少子化が学習者の数に影響しています。
台湾
1990年代に日本語学科を置く大学が次々にでき、1996年からは高校での第二外国語教育が試験的に始まりました。
第二外国語を取り入れている高校のうち、9割以上が日本語を開講しています。
一方で、少子化の影響で大学の統合が進み、ビジネス日本語など就職に結びつく科目を強化する動きも見られます。
試験ではこう問われる
- 中国の北京日本学研究センター(1985年)、実利志向、ダブルメジャー制・2+2制度
- 韓国の日本語教育のきっかけ(1965年の日韓国交正常化)と、学習者の中心(中学生・高校生)
ポイント③ 東南アジア・北米・大洋州
東南アジア
| 国 | 特徴 |
|---|---|
| インドネシア | 学習者の約9割が高校生。2013年のK13カリキュラムで第二外国語が選択科目になり減少、2023年からのムルデカ・カリキュラムでも減少が心配される。技能実習・特定技能の送り出し機関で学ぶ人は大きく増えた |
| タイ | 学習者の約8割が中等教育。1998年に大学入試に日本語が採用、2010年のWCSSで中高の日本語教育が大きく広がる |
| ベトナム | 政府の国家外国語プロジェクトで、2023年9月から小学校で日本語が正式科目に。介護・看護系の大学などでも日本語教育が広がる |
| ミャンマー | 2011年の民政移管後に学習者が増加。最近は海外で働くことをめざす若者が増え、2024年度調査で学習者が約10万人に急増 |
東南アジアでは、技能実習や特定技能で日本に来る人のための送り出し機関で、短い期間に日本語を学んで来日するケースが増えています。
北米(アメリカ)
1970年代ごろまでは日本研究のための日本語教育が中心でしたが、1980年代の日本語ブームで、ビジネスや仕事のために学ぶ人が増えました。
バブル崩壊のあとは、アニメやゲームなどのサブカルチャーをきっかけに、若い世代の学習者が再び増えています。
2006年には、高校で大学レベルの日本語コースがとれるAP日本語が始まりました。
一方で、外国語教育への国の支援が減ったり、理系(STEM)重視で外国語を卒業の条件から外したりする動きもあります。
大洋州(オーストラリア)
オーストラリアの日本語教育は、1906年にメルボルンで始まったといわれます。
第5回で学んだ言語政策のNALSASや、白書『アジアの世紀における豪州』で、日本語が学校で学ぶべき言語に位置づけられたことが、学習者の多さにつながっています。
学習者の96%は小学校・中学校・高校の段階で学んでいます。
試験ではこう問われる
- インドネシアのK13カリキュラム・ムルデカ・カリキュラム、タイのWCSS、ベトナムの国家外国語プロジェクト
- アメリカのAP日本語、オーストラリアのNALSASと、初等・中等教育の学習者が中心であること
ポイント④ 日本の日本語教育事情
学習者の数の移り変わり
国内の日本語学習者が大きく増えたのは、日本がバブル経済をむかえた1980年代後半です。
その後も増える傾向が続きましたが、阪神・淡路大震災のあとの1996年や、東日本大震災のあった2011年、新型コロナウイルスで入国が制限された2020年には、学習者が大きく落ちこみました。
2019年の日本語教育推進法、2023年の日本語教育機関認定法の成立によって、日本語教育の制度は大きく変わる時期をむかえています。
日本語教育実態調査
文部科学省が毎年行っている日本語教育実態調査(1967年から毎年実施)では、国内の日本語教育の状況がわかります。
| 項目 | 令和6年度(2024年11月時点) |
|---|---|
| 日本語学習者 | 約29万4,000人(過去最多) |
| 日本語教師等 | 約5万300人(初めて5万人を超える) |
| 機関・施設等 | 約2,700 |
学習者の特徴は、次のとおりです。
- 属性:留学生が約65%でもっとも多い。ビジネス関係者、技能実習生、日本人の配偶者などが続く
- 出身地域:アジアが約85%。中国・ネパール・ベトナムの順に多く、中国がもっとも多い
- 日本にいる期間:短い人が多く、来日してすぐの時期の日本語支援が大切
日本語教師の特徴
日本語教師の内訳を見ると、ボランティアが約半数で、常勤の人は1割あまりです。
年齢は60代・50代・70代以上が中心で、中高年の人たちが日本語教育を大きく支えていることがわかります。
教えている場所では、学習者・教師ともに、法務省告示機関(いわゆる日本語学校)がもっとも多くなっています。
試験ではこう問われる
- 日本語教育実態調査を行う機関(文部科学省)と頻度(毎年)
- 国内の学習者の属性(留学生が最多)と出身地域(アジアが8割以上、中国が最多)
- 日本語教師の約半数がボランティアであること
ポイント⑤ 日本語教育の関係機関
文部科学省
長いあいだ、文部科学省には日本語教育を専門に扱う部局がなく、文化庁が中心になって、「生活者としての外国人」への日本語教育や、難民・中国帰国者への日本語教育などに取り組んできました。
2024年4月、文部科学省総合教育政策局に日本語教育課ができ、文化庁国語課が担ってきた日本語教育の仕事が移されました。
主な関係機関と事業
| 機関 | 主な事業 |
|---|---|
| 国立国語研究所(NINJAL) | 日本語と日本語教育の調査研究。学習者の作文や会話のコーパス、消滅危機言語の研究など |
| 日本語教育学会 | 日本語教師や研究者の団体で国内最大。年2回の研究大会、学会誌『日本語教育』 |
| 国際交流基金(JF・1972年設立) | 海外への専門家派遣、海外の教師の研修、JF日本語教育スタンダード(2010年)と教材『まるごと』、JF生活日本語Can-do(2019年)と教材『いろどり 生活の日本語』、海外日本語教育機関調査、海外でのJLPT |
| 日本学生支援機構(JASSO) | 日本留学試験、東京・大阪の日本語教育センター、日本留学の情報提供 |
| 日本国際教育支援協会(JEES) | 国内の日本語能力試験、日本語教育能力検定試験 |
| 海外産業人材育成協会(AOTS) | 開発途上国の産業人材の研修。外国人社員、技能実習、特定技能、EPA候補者などへの日本語教育 |
| 国際協力機構(JICA) | 政府開発援助(ODA)を担う。JICA海外協力隊の日本語教育隊員を派遣 |
| 外国人技能実習機構(OTIT) | 技能実習の適正な実施と技能実習生の保護(計画の認定、実地検査、相談・援助など) |
| 国際日本語普及協会(AJALT) | 学習者第一主義。ビジネス関係者や難民、外国人児童生徒など、一人ひとりに合わせた日本語教育。教材『Japanese for Busy People』など |
試験ではこう問われる
- 2024年4月に文部科学省に日本語教育課ができ、文化庁から仕事が移ったこと
- 国際交流基金のJF日本語教育スタンダードと『まるごと』、JF生活日本語Can-doと『いろどり』の組み合わせ
- 機関の略称と事業(JASSO=日本留学試験、JEES=国内のJLPT・検定試験、JICA=海外協力隊、OTIT=技能実習)
学習者はここでつまずく
一方、アニメやマンガで日本語を覚えた学習者は、聞き取りやくだけた表現は得意でも、ていねいな言葉づかいや漢字が苦手なことがあります。
技能実習や特定技能の送り出し機関で短期間に学んだ人は、仕事の言葉は知っていても、生活の場面で困ることがあります。
確認クイズ(5問)
答えを考えてから、「答えを見る」を押してください。
Q1. 海外の日本語教育の状況を3年ごとに調べている「海外日本語教育機関調査」を行っている機関はどれ?
① 文部科学省 ② 国際交流基金 ③ 日本学生支援機構 ④ 国立国語研究所
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正解:② 国際交流基金
国内の状況は、文部科学省が毎年「日本語教育実態調査」で調べています。
Q2. 海外で日本語学習者がもっとも多い国はどこ?(2024年度調査)
① インドネシア ② 韓国 ③ 中国 ④ オーストラリア
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正解:③ 中国
学習者数が100万人を超えているのは中国だけです。2位インドネシア、3位韓国、4位オーストラリアと続きます。
Q3. 国内の日本語教育実態調査で、日本語学習者の属性としてもっとも多いのはどれ?
① 技能実習生 ② 日本人の配偶者 ③ ビジネス関係者 ④ 留学生
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正解:④ 留学生
学習者の約65%を占めています。出身地域ではアジアが8割以上で、中国がもっとも多くなっています。
Q4. 国際交流基金が2019年に発表した「JF生活日本語Can-do」にもとづく教材はどれ?
① まるごと ② いろどり 生活の日本語 ③ Japanese for Busy People ④ みんなの日本語
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正解:② いろどり 生活の日本語
『まるごと』はJF日本語教育スタンダードにもとづく教材、『Japanese for Busy People』は国際日本語普及協会(AJALT)の教材です。
Q5. 2024年4月に、文化庁国語課から日本語教育の仕事が移された部署はどこ?
① 文部科学省の日本語教育課 ② 出入国在留管理庁 ③ 国際交流基金 ④ 外国人技能実習機構
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正解:① 文部科学省の日本語教育課
文部科学省総合教育政策局に新しくつくられました。
まとめ

- 海外:海外日本語教育機関調査(国際交流基金・3年ごと)。約400万人、東アジア・東南アジアで約7割、理由のトップはアニメ・マンガなどへの興味
- 国別:中国・インドネシア・韓国・オーストラリアの順。中国は唯一の100万人超え
- 各国:中国の北京日本学研究センターと実利志向、韓国は1965年の国交正常化、インドネシアは高校生が9割、タイのWCSS、アメリカのAP日本語
- 国内:日本語教育実態調査(文部科学省・毎年)。約29万人、留学生が最多、アジアが8割以上、教師の約半数がボランティア
- 関係機関:2024年に文部科学省に日本語教育課。国際交流基金のJFスタンダード・いろどり、JASSO・JEES・JICA・OTIT・AJALTなど
第7回では、世界と日本の日本語教育の今を、調査と関係機関から学びました。
次回の第8回「社会言語学」からは、区分「言語と社会」に入ります。
講座の全体は、50項目講座の目次から確認できます。
※数字は、国際交流基金「2024年度 海外日本語教育機関調査」、文部科学省「令和6年度 日本語教育実態調査」などの公表資料にもとづき、2026年10月時点でまとめています。到達目標は、文部科学省「登録日本語教員 実践研修・養成課程コアカリキュラム」の必須の教育内容から引用しています。項目の論点は、その解説書の章立ても参考に整理しています。