この項目は、ことばを使った言語行動と、表情・視線・身ぶりなどの非言語行動を学ぶ回。試験では、非言語行動の5つの種類(エンブレム・イラストレーター・アフェクト・ディスプレイ・レギュレーター・アダプター)と、言語情報・パラ言語情報・非言語情報の区別がよく問われる。
50項目講座の第12回は、区分「言語と社会」から「言語・非言語行動」です。
わたしたちは、ことばだけでなく、表情や視線、声の調子、身ぶりなどを組み合わせて、気持ちや考えを伝えています。
この回では、ことば以外の要素がどんな役割を果たしているのかを、種類ごとに整理していきます。
動画で学ぶ「言語・非言語行動」(約4分半)
この回の要点を、LULUとHARUの会話で約4分半の動画にまとめました。
通勤中や家事の合間に、耳で聞くだけでも復習できます。
最後の確認クイズ2問で、覚えたかどうかを試してみてください。
この項目で求められること
文部科学省のコアカリキュラムでは、この項目の到達目標を「コミュニケーションにおける言語的な行動及び非言語行動の様相について理解している」としています。
コミュニケーションを、ことばだけでなく、表情や声、身ぶりまでふくめていろいろな面から見ることが求められています。
試験では、しぐさの例がどの種類の非言語行動にあたるかを選ぶ問題がよく出ます。
ポイント① 言語行動と非言語行動
言語行動
音声や文字などのことばを使って行う、人どうしのやりとりを言語行動といいます。
言語行動によるやりとりを、言語コミュニケーション(バーバル・コミュニケーション)と呼びます。
言語行動には、次のようないろいろな行為がふくまれます。
- 情報を伝える:紹介、説明、発表など
- 相手に働きかける:質問、依頼、承諾など
- 自分の気持ちを表す:喜びや悲しみの表現
- 相手の気持ちに気を配る:感謝、なぐさめ、はげましなど
- 人間関係を保つ:あいさつなど
ことばを、ただの記号の集まりとしてではなく、人の社会的な活動の一つとして見る考え方です。
非言語行動
ことば以外の方法で、気持ちや意図、相手との関係を伝える行動を非言語行動といいます。
表情、視線、体の動き、姿勢、沈黙などがふくまれ、これによるやりとりを非言語コミュニケーション(ノンバーバル・コミュニケーション)と呼びます。
非言語行動は、言語行動と一緒に使われて、話の意味を強めたり、相手との関係を調整したりします。
試験ではこう問われる
- 言語コミュニケーション(バーバル)と非言語コミュニケーション(ノンバーバル)の区別
- 非言語行動に、表情・視線・姿勢・沈黙などがふくまれること
ポイント② エンブレムとイラストレーター
非言語行動は、はたらきによって5つに分けられます。
| 種類 | ひとことで言うと | 例 |
|---|---|---|
| エンブレム | ことばの代わり | うなずいて「はい」、鼻を指して「私」 |
| イラストレーター | ことばを目で見てわかるように補う | 「これくらい」と両手で大きさを示す |
| アフェクト・ディスプレイ | 感情の表れ | 笑顔、まゆをひそめる |
| レギュレーター | 会話の流れの調整 | うなずき、視線で話す順番を渡す |
| アダプター | 心の状態の表れ(無意識) | 髪をいじる、指で机をたたく |
エンブレム
エンブレムは、ことばの代わりに意味を伝える体の動きで、同じ集団の中で決まった意味を持ちます。
首をたてにふって「はい」、人差し指で自分の鼻を指して「私」を表すのがその例です。
野球のサインや、スキューバダイビングのハンドシグナルのように、声が使えない場面で使われることもあります。
ただし、エンブレムの意味は文化によってちがうことがあります。
親指を立てるしぐさは、日本では「いいね」の意味でも、国によっては相手を侮辱する意味に受けとられることがあるので、注意が必要です。
イラストレーター
イラストレーターは、話している内容を、目で見てわかるように補ったり強めたりする体の動きです。
「これくらい大きかった」と言いながら両手を広げるのが典型的な例です。
日本語話者が「ありがとうございます」と言いながらおじぎをするのも、感謝の気持ちを目に見える形で強めるイラストレーターと考えられます。
イラストレーターは、ことばと強く結びついていますが、使い方や使う回数は文化によってちがいます。
試験ではこう問われる
- エンブレム(ことばの代わり・うなずき、鼻を指す)とイラストレーター(ことばを補う・両手で大きさ)の区別
- 親指を立てるしぐさのように、エンブレムの意味が文化によってちがうこと
ポイント③ アフェクト・ディスプレイ・レギュレーター・アダプター
アフェクト・ディスプレイ
アフェクト・ディスプレイは、感情を体で表す非言語行動です。
表情、声の調子、姿勢、体の緊張やゆるみなどで、喜怒哀楽やおどろき、不安などが表れます。
笑顔は喜びや親しみを、まゆをひそめた表情は不快感やとまどいを表すとされます。
自然に表れるものですが、どれくらい表すか、どんな場面で表してよいかは文化によってちがいます。
日本の文化では、感情をおさえることが大切にされる傾向があり、同じ感情でも欧米よりひかえめに表すことが多いといわれます。
レギュレーター
レギュレーターは、会話の流れや、やりとりのタイミングを調整する非言語行動です。
視線、うなずき、手ぶり、間の取り方、姿勢の変化などで、話の始まりや続き、終わり、話す順番の交代をコントロールします。
聞き手がうなずいたり「うん」とあいづちを打ったりするのは、話し手への「続けていいよ」という合図になります。
話し手が相手に視線を向けながら話し終えるのは、「次はあなたが話していいよ」という交代の合図になります。
アダプター
アダプターは、話し手が自分の体や身のまわりの物に対して無意識にする動作で、心の状態を表します。
髪をいじる、指で机をたたく、腕を組む、などがその例で、不安や緊張、退屈、身構えた気持ちのサインと受けとられることがあります。
本来は意味を伝えるための動作ではありませんが、文化によっては失礼だと誤解されることもあります。
試験ではこう問われる
- アフェクト・ディスプレイ(感情の表れ)と、日本では感情をひかえめに表す傾向
- レギュレーター(うなずき・視線で会話の順番を調整)の例
- アダプター(髪をいじる・机をたたく=無意識の動作)の例
ポイント④ 言語情報・パラ言語情報・非言語情報
コミュニケーションでは、ことばそのものだけでなく、話し方や身ぶりなどをふくめたいろいろな情報がやりとりされています。
これらは大きく3つに分けられます。
| 情報 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 言語情報 | ことばそのものが伝える意味 | 「行きます」「うれしい」 |
| パラ言語情報 | 話すときの声の特徴 | 声の大きさ、話す速さ、リズム、イントネーション、ポーズ、ため息、笑い声 |
| 非言語情報 | ことばがなくても伝わる、目や体の情報 | 身ぶり手ぶり、表情、視線、姿勢、相手との距離 |
言語情報は、どんな声や表情で話しても変わらない、はっきりした意味です。
パラ言語情報は、話し手の気持ちや態度について、より多くのことを伝えます。
同じ「いいですよ」でも、明るい声と、ため息まじりの低い声とでは、伝わる気持ちがまったくちがいます。
非言語情報は、無意識のうちに表れることも多く、親しさや緊張、賛成・反対といった、相手との関係を知る手がかりになります。
試験ではこう問われる
- 言語情報・パラ言語情報・非言語情報の区別
- 声の大きさ・速さ・イントネーション・ポーズ・ため息はパラ言語情報、表情・視線・距離は非言語情報
ポイント⑤ 文化によるちがい
言語行動や非言語行動のあり方は、文化によって大きくちがいます。
同じしぐさでも国や地域によって意味がちがったり、沈黙や視線の使い方の受けとめ方がちがったりします。
- しぐさの意味:親指を立てるしぐさは、国によって侮辱の意味になる
- 感情の表し方:日本ではひかえめに表す傾向がある
- 沈黙:考えている時間と受けとる文化もあれば、気まずさと受けとる文化もある
- 視線:目を見て話すのが誠実とされる文化もあれば、目上の人の目をじっと見るのは失礼とされる文化もある
対人距離
話すときに相手とどれくらい離れて立つか(対人距離)も、非言語情報の一つです。
アメリカの文化人類学者ホールは、相手との関係によって、心地よい距離が変わることを示しました。
| 距離 | 目安 | 相手 |
|---|---|---|
| 密接距離 | 0〜45cmくらい | 家族や恋人など、ごく親しい人 |
| 個体距離 | 45〜120cmくらい | 友人など |
| 社会距離 | 120〜360cmくらい | 仕事の相手など |
| 公衆距離 | 360cm以上 | 講演の聞き手など |
心地よいと感じる距離は文化によってちがうので、近すぎると圧迫感を、遠すぎると冷たさを感じさせることがあります。
試験ではこう問われる
- しぐさ・沈黙・視線の意味が文化によってちがうこと
- ホールの対人距離(密接・個体・社会・公衆)
学習者はここでつまずく
また、あいづちやうなずきが少ないと「聞いていない」と思われたり、目上の人の目をじっと見ないように教えられてきた学習者が「自信がない」と思われたりすることもあります。
反対に、日本人がひかえめに表す感情や、沈黙の意味が、学習者には伝わりにくいこともあります。
確認クイズ(5問)
答えを考えてから、「答えを見る」を押してください。
Q1. 人差し指で自分の鼻を指して「私」を表すような、ことばの代わりに意味を伝える動作を何という?
① エンブレム ② イラストレーター ③ アダプター ④ レギュレーター
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正解:① エンブレム
ことばがなくても意味が伝わる動作です。「これくらい」と言いながら両手で大きさを示すのはイラストレーターです。
Q2. 聞き手がうなずいて「話を続けていいよ」と合図するのは、どの非言語行動?
① エンブレム ② アフェクト・ディスプレイ ③ レギュレーター ④ アダプター
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正解:③ レギュレーター
会話の流れや話す順番を調整する非言語行動です。
Q3. 話しながら無意識に髪をいじったり、指で机をたたいたりする動作を何という?
① イラストレーター ② アダプター ③ エンブレム ④ レギュレーター
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正解:② アダプター
不安や緊張、退屈などの心の状態を表すことがあります。
Q4. 声の大きさ、話す速さ、イントネーション、ため息などは、どの情報にあたる?
① 言語情報 ② パラ言語情報 ③ 非言語情報 ④ 対人距離
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正解:② パラ言語情報
ことばに伴う声の特徴で、話し手の気持ちや態度を伝えます。表情や視線は非言語情報です。
Q5. 「ありがとうございます」と言いながらおじぎをするのは、どの非言語行動と考えられる?
① エンブレム ② イラストレーター ③ アダプター ④ アフェクト・ディスプレイ
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正解:② イラストレーター
感謝のことばを、目に見える形で強める動作と考えられます。
まとめ

- 言語コミュニケーション(バーバル)と非言語コミュニケーション(ノンバーバル)
- エンブレム=ことばの代わり、イラストレーター=ことばを補う(おじぎも)
- アフェクト・ディスプレイ=感情、レギュレーター=会話の調整、アダプター=無意識の動作
- 言語情報・パラ言語情報(声の調子)・非言語情報(表情・視線・距離)
- しぐさ・感情の表し方・沈黙・視線・対人距離(ホール)は文化によってちがう
第12回では、ことばと、ことば以外の行動が、どのようにコミュニケーションを支えているかを学びました。
次回の第13回「多文化・多言語主義」に進みましょう。
前回の第11回「待遇・敬意表現」もあわせて復習しておきましょう。
講座の全体は、50項目講座の目次から確認できます。
※到達目標は、文部科学省「登録日本語教員 実践研修・養成課程コアカリキュラム」の必須の教育内容から引用しています。項目の論点は、その解説書の章立ても参考に整理しています。